人民元の現在と今後について

FXのための国際通貨研究所事務局   2016年8月8日   人民元の現在と今後について はコメントを受け付けていません。

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人民元は通貨の特別引出権(SDR)に採用されるなど、近年その存在感を増していますが、独特な為替制度など、謎の多い通貨でもあります。
今回は、謎の多い人民元の現在と今後について見てみましょう。

改革開放と二重相場制

人民幣(レンミンペイ)とも呼ばれる人民元は、1949年の中華人民共和国建国に前後してまちまちだった地域貨幣に代わる管理通貨として導入された中国全土共通の法定通貨です。中国は建国から長らく政治的・経済的混乱が続き、対外貿易が極めて限定的だったため、全ての外貨取引が政府の管理下におかれていました。

しかし70年代には米中国交正常化を経て交易が活発化、同時期のニクソン・ショックと外国為替市場の変動相場制への移行にともない、人民元も複数の外貨と連動する通貨バスケット制へと移行します。80年代に入ると、毛沢東(もう・たくとう)の後を襲った鄧小平(とう・しょうへい)によって改革開放政策が採用されます。

改革開放政策では、国際通貨基金(IMF)への加盟をはじめとする国際政治への参加と、開放特区の設置による経済開発が積極的に進められます。市場経済への移行期に当たるこの時期には、人民元の貿易決済でのレートと兌換元の公定レートが別に定められ、二重相場制などとも呼ばれていました。

相場フロート制の導入と事実上の固定相場制

90年代半ばに改革開放により経済成長が進み、社会主義市場経済が本格化、外国からの投資活性化のために二重相場制の廃止と管理フロート制の採用がおこなわれます。1997年に発生したアジア通貨危機により、周辺諸国は変動相場制への移行を余儀なくされたものの、この時期に中国はむしろ為替管理の強化をおこない、1ドル = 8.28元の事実上の固定相場を維持します。

その後、中国経済が急速に成長する中で、アメリカや日本をはじめとする主要国から変動相場制に準ずる柔軟な為替管理を強く求められるようになります。この要求に屈する形で、2005年には事実上の固定相場を廃し、通貨バスケットを参考にする管理変動相場制が再開されました。その後もたびたび管理方式の変更などがありながら、徐々に緩やかになったことで、15年までには1ドル = 6.2元程度まで値をあげています。
注意したいのは、中国の為替制度は値動きを完全な変動相場制ではなく、一定の振れ幅を見込んだ当局が調整をおこなう管理変動相場制を維持している点です。

そのため、変動相場制ではありえないような値動きをすることは現在でもひんぱんに生じており、人民元の信用と流動性を大きく制限する原因の1つとなっています。

急激な経済成長と進む人民元高

1970年代から現在に至るまで続いている改革開放政策により、中国はアメリカに次ぐ世界第2位の経済規模を持つ国にまで成長を遂げました。このような急激な経済成長は資産としての人民元の価値を高めることにつながり、長期的な人民元高を招くこととなります。人民元高は製造業のコスト押し上げ要因となるものの、それ以上に元の購買力を上昇させる効果も果たしました。

しかし、北京オリンピックに前後して経済成長はバブル景気となり、国内の格差解消を目指して維持されているため、危機感を持った外貨の流出が続いています。外貨流出を食い止めるために中国人民銀行はドル売り元買の為替介入を継続していますが、その資金にも限度があります。

更に2015年11月には、人民元がIMFの特別引き出し権(SDR)の構成通貨として採用されました。これにより当局が強硬な通貨介入をおこなうことは難しくなり、金融市場の更なる自由化に踏み切れない中で難しい舵取りを迫られています。

おわりに

日本を抜いて世界第2位の経済規模を持つ国となった中国ですが、数少ない社会主義国家であり、為替制度1つとっても独特なものです。その動向は外国為替市場だけではなく、日本経済にも大きく影響するため、要注目と言えるでしょう。