ユーロの現在と今後について

FXのための国際通貨研究所事務局   2016年9月4日   ユーロの現在と今後について はコメントを受け付けていません。

ユーロの現在と今後について

新世紀のはじまりとともに華々しく導入された欧州共通通貨ユーロですが、その先行きが明るくありません。
ユーロの現在と今後の動向について見てみましょう。

欧州連合(EU)の発足と通貨ユーロの誕生

通貨ユーロは欧州統合の大目標に向けて導入された重要な一歩ですが、現在の形で欧州連合(EU)が発足したのは東西冷戦終結後の1991年12月と比較的最近のこと。

EUの前身となるのは、

  • 欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)
  • 欧州経済共同体(EEC)
  • 欧州原子力共同体(EURATOM)

の3つの委員会と理事会が一本化された欧州共同体(EC)です。

EUの発足により有力な市場に成長したことで、欧州統合の次の一歩として通貨統合に踏み出しますが、70年代の国際通貨不安やオイルショックにより頓挫しました。
その後、EC加盟国間で存在する300項目近くの非関税障壁を除去することを目指した「域内統合白書」により域内市場統合を進めます。
合わせて単一欧州議定書の採択をきっかけとして、EU条約やアムステルダム条約、ニース条約により欧州統合をより一層すすめ、2004年6月には欧州憲法条約が制定されます。

政治面での欧州統合と合わせて、域内統合白書をきっかけとして経済面での統合も進められ、1999年に導入されたのが欧州単一通貨「ユーロ」です。
発足当初は11カ国の導入に限られていましたが、2002年の紙幣・硬貨の流通と前後して加盟国が急拡大、2016年7月時点ではEU加盟28か国中19か国が導入する巨大な通貨となっています。

導入国の急拡大と表面化した加盟国間の経済格差

欧州中央銀行(ECB)と各国中央銀行によって管理されているユーロは、加盟にあたって「統一通貨参加基準(経済収斂基準))と呼ばれる基準を達成する必要があります。

統一通貨参加基準の内容を見てみると、

  • インフレ率が基準値未満であること
  • 対GDP比で財政赤字が3%以下、債務残高が60%以下
  • 為替レートが最低2年間は安定して推移していること
  • 長期金利が基準値未満であること
  • 中央銀行が独立していること

があげられます。

その後、為替レートの変動により混乱することもありましたが、変動幅を上下15%に拡大して欧州通貨制度(EMS)は安定することとなります。

このように発足直後から順調に規模拡大を続けてきた通貨ユーロですが、2008年の世界金融危機とその直後の欧州ソブリン危機をきっかけに、大きくつまずくこととなります。
欧州ソブリン危機とは、2009年10月のギリシャの政権交代による国家財政の粉飾決算の暴露をきっかけとする一連の経済危機の総称です。
きっかけとなったギリシャをはじめ、「PIIGS(ピッグス)」と呼ばれる一部のユーロ加盟国や東欧諸国に飛び火することで再度の世界規模での金融危機に発展することが懸念されました。
欧州ソブリン危機では、初期からのユーロ加盟国であるギリシャがユーロ離脱をめぐって国民投票をおこなうなど、加盟国間での経済格差が浮き彫りになりました。
同時に持ち上がったのが、EU加盟国の中でも主要な役割を果たすイギリスのEU離脱(ブレグジット)です。

イギリスのEU離脱(ブレグジット)がもたらす影響は

ユーロの急激な拡大はEU内部でのイギリスの発言力の低下と負担増加をまねき、高まった不満と不安はイギリスがEUに残留することの是非を国民投票で問うこととなります。
2016年6月におこなわれた投票では僅差で離脱派が勝利、イギリスのEU離脱(ブレグジット)が現実のものとなりました。
イギリスはEUの主要国でありながらユーロ未導入国であり、欧州経済と世界経済に与える影響の大きさは未知数と言えます。

おわりに

加盟国間での経済格差や誰もが予想していなかったブレグジットの実現など、新世紀のはじまりとともに導入された通貨ユーロの前途は多難と言えます。
外国為替市場では米ドルに次ぐ取引高を誇るユーロですが、その動向にはこれまで以上に注目する必要がありそうです。